研究概要 |
本研究の目的は, 多様な経路を辿って展開した近代日本における機械工業について, 「地方機械工業」の視点から明らかにすることである。これまでの研究では, 特に大都市工業圏(東京・大阪など)にみられない様々な特徴を有する在郷の鉄工所や野鍛冶等に着目して検討を進めてきた。 本研究では, 地域史を基礎とした国際比較・関係史の視点から「地方機械工業」の発展を検討し, 日本機械工業の相対化を目指す。具体的には, (1)アメリカ農業機械工業の分析〜中小農業機械メーカーの展開〜と(2)在米日本商社の機械取引〜三菱商事・西海岸支店の諸活動〜の2つを研究の軸として設定した。全体的な問題関心の所在は, 日本・米国・アジアの各地域の地方機械工業の比較・関係史的研究を基礎に, 国際的な視点から多様な工業化のあり方・経路を実証的に明らかにすることである。 以上の問題意識を踏まえて3年間の研究期間の中間年度である平成20年度は, 前年度に引き続いて, 国内外の資料調査と文献収集に力を注いだ。特に本年度は, オーストラリア国立公文書館所蔵の日系総合商社資料の調査に取り組み, 大きな成果を挙げることができた。同資料の特徴は, アメリカ国立公文書館所蔵資料(RG131)と同様に接収時点の総合商社在外支店の資料がそのまま残されている点にある。特に本研究課題との関連では, 三菱商事シドニー支店, メルボルン支店の資料が重要であり, 戦前期において展開した工作機械や自動車の対オーストラリア輸出の実態を明らかにできる資料群を検討することによって, 戦後の高度経済成長を牽引した機械輸出の萌芽を確認することができた。 さらに本年度は, 本研究課題に直接関係する学会・研究会へ積極的に参加し, 研究成果の共有・発展に取り組んだ。
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