研究概要 |
本研究の中心的課題は,日本と米国における農業機械工業の比較・関係史であり,最終年度は,これまでの資料調査の結果を集約し,また補足的な米国資料調査と資料収集を実施した。具体的には,(1)アメリカ農業機械工業に関する調査,(2)在米日本商社の機械取引の2つを軸に,日本・米国・アジアの各地域の地方機械工業の比較・関係史的研究を試みた。また,近年の経済史研究における大きな課題の一つである,「多様な工業化」について,国際的な視点から実証性の高い研究を目指した。以上の課題・問題意識に基づき,3年間の研究期間の最終年度である平成21年度は,(1)国内資料の収集,(2)米国調査(ニューヨーク,ワシントンDC)を実施し,研究の総括を図った。米国調査では,ニューヨーク歴史協会の所蔵資料を中心に,アメリカ中小機械器具工場の資料など本研究の中核の一つであるアメリカ農業機械工業に関する資料を収集し,大きな成果があった。またワシントンDCでは,米国国立公文書館所蔵の接収資料から商社関係(三菱商事)の資料を撮影・調査した。米国調査の結果,これまでの成果と合わせて,アメリカ機械工業界と東アジア(日本を含む)の関係,日系商社の役割・意義に関して,実証的な分析の端緒を開くことができた。本研究で明らかとなったアメリカ中小農業機械メーカーと日本商社の関係,日本=アメリカ=東アジアにおける地方機械工業の展開過程を通して,各国・各地域の「工業化」の相対化が可能になり,日本の工業化・産業発展の意義を実証的に再検討することができた。
|