本研究は中国の資本市場を産業金融の転換システムとして、中華民国以来現在に至る長期的・歴史的把握から捉えなおすことにより、民国期の資本市場と産業金融にかかわる研究の深化・拡大を図るものである。その意義は今日における中国の金融改革の方向性に対してのみならず、これまで個別に捉えられていた東アジアの金融・証券市場についてもよりグローバルなネットワークの形成の角度から整合的に捉えなおす契機を提供することにある。 上述した目的を達成させるために、これまで構築してきた研究ネットワークを活用し、知識と資料の共有をはかるとともに、上海、南京、台北、台南への資料調査と研究者交流を行った。そうした研究活動は開花し、2008年2月に「山東省からみた中国電力産業の需要依存型発展」(田島俊雄編著『現代中国の電力産業』第2章所収、昭和堂)を公表することができた。その中で、中華民国期から現在までの100年に及ぶ歴史期間を通して、電気需要と電力需要が電力産業の発展との関係を実証研究により解明を試みた。その結果、中国の電力産業は自らダイナミック的な発展を遂げることが出来ず、資本市場をはじめとする外部市場に強く制約された発展様式をもっている結論に至った。
|