今年度は、年度当初に上げた研究目的および実施計画に沿い、大きく次の2点を中心に研究を進めてきた。1点目は、パキスタン財閥と彼らの出自についてである。具体的には、パキスタンでは1980年代以降にラホールを中心としたパンジャーブ地方から多くの財閥が輩出されてきた。その点についての研究を行ってきた。もちろん現時点で結論を出すことはできない。しかし、暫定的な結論として財閥の企業活動に政財官界につながる人脈が大きくかかわっているということを言うことができる。現在、財閥一族と政官界の相関図(人脈図)を作成中である。以上の点についてはパキスタン人、パキスタン研究者および企業関係者が参加した「シンポジュームパーキスターン2007(日本パキスタン協会)」で報告を行った。2点目は、パキスタンと同じイスラームの国であるドバイ(UAE)に存在する財閥の出自ならびに形成過程について研究を行ってきた。ドバイの財閥研究は、イスラーム諸国に存在する財閥(企業)を比較するためである。2007年8月には約1週間の日程で、ドバイで現地調査(図書館、企業、商工会議所、etc.)を実施した。その成果は『経済論集』第22巻第1号(大阪学院大学経済学会)に「ドバイの経済発展と財閥に関する一考察-アルフテイム財閥を中心として-」として投稿中(2008年6月発行予定)である。 今年度が同研究の最初の年度であり、以上の点も次年度以降も継続し研究を行っていく。特に、パキスタン財閥の相関図(人脈図)は、これまでそれに類似するものがないためパキスタンの企業経営および財閥を見る上で貴重な資料になると思われる。また現在、多くの国々でイスラームをめぐり調査および議論がなされている。当初は、イスラーム諸国における財閥の形成過程の比較の観点(裕福なイスラームの国とそうではない国)を取り入れるためにドバイでの調査を実施したが、資料および情報提供の観点からも一つでも多くのイスラームの国に存在する財閥および企業を今後、日本へ紹介していきたい。
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