研究概要 |
本研究の具体的内容は,医療現場という多様な専門職やナレッジワーカーが働く職場における,チーム作業を中心とする人的資源管理システムについての探索的なフィールド・ワークである.平成19年度は,協力的かつ先進的な調査先が確保できたため,そのリサーチ・サイトにおいて予備調査を行い大量のデータを収集した.集められたデータの一部には,看護師や理学療法士等を対象としたインタビュー・データや,人事考課や給与体系に関する未公開の内部資料等が含まれる.琉球大学法文学部経済研究において公刊に利用したデータは収集されたものの一部に過ぎないが,現在,体系的な書物と論文を執筆中である.現段階での研究成果とその意義は以下のように整理される. 公刊論文において発見事実として強調した点は,専門職やナレッジワーカーから構成されるチームの多技能化促進要因を確認したことである.具体的には,人事考課に用いられる技能評価表や共通評価表に含まれるチームワークに関する項目(例えば,「役割分担が不明瞭な業務に進んで協力ができる」)の存在である.チームに関する先行研究では,チーム活動を円滑に進めるため,チーム・メンバーの技能や知識を評価する仕組みの必要性が指摘されている.平成19度の予備調査の中で,医療現場という高度な専門性が求められる職場においてもそのような仕組みが確認されたことは意義を有するものであり,専門職やナレッジワーカーのチーム・マネジメントについて今後検討するうえで重要なポイントになると考えられる. 平成19年度の研究実施計画の段階では,多技能化促進要因として教育訓練の仕組みに着目していたが,予備調査で明らかになったような評価の仕組みは,平成20年度から実施する本調査の枠組みに加えられるべき要素の1つになる.
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