本研究では、ソーシャル・イノベーションを「多様な社会的な課題を解決に導く新しい社会的なビジネスモデル(仕組み)の構築ならびに新しい社会的商品・サービスの開発」と定義し、既存のソーシャル・イノベーションに関する理論を整理し、対象とする領域やアプローチの手法などからそれらの議論を大きく3つに類型化し各議論の課題を明らかにした。 そこから明らかになった点は、ソーシャル・イノベーションという用語が極めて多様な意味合いで解釈・使用されているということ(社会運動、社会変革、社会変動としての意味合いから、本研究のようにビジネスの手法を用いた社会的課題の解決というものまで)と、「社会的課題」の意味内容に関してもミクロ・レベルのソーシャル・イシューを対象とするものから「社会経済システム」や「制度変化」というマクロ・レベルの議論を展開するものまで幅広い議論が展開されてきていることが明らかになった。さらにこれらのレビューを通して、ソーシャル・イノベーションの創出プロセスに関する考察が皆無であり、またそれらのソーシャル・イノベーションの広がり・普及に関する考察も今後の研究課題として残されていることが明らかになっている。 また本研究では、ソーシャル・ビジネスという新しい事業スタイルにも注目し、その定義、構造を明らかにし、その特徴として問題解決志向、社会的領域へのアプローチ、ダブルボトムライン、組織形態の多様性、拡張志向、社会的価値の共有、大企業との連携を指摘した。
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