研究概要 |
平成19年度には,文献調査と関連資料の収集,企業訪問及びヒアリングを中心に,本研究の基礎となる調査活動を続けた。まず,財務省貿易統計や経済産業省の生産動態統計,電子情報技術産業協会や(財)家電製品協会など関連業界の公表する統計データを通じて,国内外の家電製品の流れや原料市況の変動を整理している。次に,企業訪問では,家電リサイクル法に基づいて,家電メーカーからの受託もしくは家電メーカーの出資で設立され業務を実施している再資源化事業者の調査を行った。現時点においては,家電メーカーにとって,再資源化事業は同法の遵守のための必要を満たすことが主な目的である。ただし,それはもちろんのこと,特に家電メーカーの100%出資の再資源化事業者では,製品の解体効率性の向上や素材選択に於ける技術革新を重要な課題としていることがわかった。製品の解体容易性を高めることにより,製品ライフサイクル全体のコストを低減することで,再資源化資源の価格を抑え,それを用いる次の製品価格で消費者に還元しようという考えに基づいて,家電メーカーは当事業に取り組んでいることが理解できた。また,家電製品の高性能化に伴い,様々な希少金属が製品に採用される比率が高まると,再資源化事業は,それらの安定確保において重要な役割を担うようになる。先端的な家電製品の安定供給を実現するためには,製品の再資源化ラインの内製化と外注化の選択が,家電メーカーにとって環境、資源戦略の重要な論点となる可能性がある。ただし,現在の実務レベルでは,それを踏まえた具体的な取り組みが実施されているわけでないことがわかった。
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