グローバル企業による製品ライフサイクル全体を含めた包括的なバリューチェーンのモデルを提案したい。企業による事業活動は、単独の企業によって完結するのではなく、複数企業の連携による協働の成果として実現される。例えば、家電組立メーカーであれば、数千点ある部品を調達するために、数百の素材・部品供給メーカーからの直接的・間接的な調達を通じて完成品を顧客に提供することができる。加えて、今日の資源循環型社会の文脈においては、メーカー・関連事業者・ユーザーの適正な役割分担の下で製品の解体・再資源化に取り組むことが、家電リサイクル法の下で制度化されている。企業の中には、環境経営を実践することのプレミアムを市場において獲得するために、自社のバリューチェーンを動脈・静脈を含む形で包括的に定義し、そのガバナンスに取り組み始めているものがある。従来から、バリューチェーンの最適化はSCM(サプライチェーン・マネジメント研究の課題として取り扱われて来ている。 しかし、その内容は生産・供給に関わる動脈サイドに留まっている。本研究の対象は、資源の回収・再利用に関わる静脈サイドを含めた動脈・静脈トータルでの拡張的なバリューチェーン・マネジメントである。その現状と課題を定量的・定性的アプローチで明らかにし、さらには課題解決に貢献しうる活動オプションを処方箋として提案したい。
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