食品の偽装表示や無登録農薬の使用など相次ぐ食品事故により消費者の食の安全性への信頼が大きく揺らぐ中、万一食品事故が発生した場合でも商品を迅速に回収し、その原因究明を容易にするトレーサビリティ・システムの導入が加速している。世界的に牡蠣養殖で有名な宮城県石巻地域においても平成14年に一部の牡蠣パック加工業者が韓国産牡蠣を宮城産と偽って販売した韓国産牡蠣混入(偽装)事件を契機に「宮城県生かきトレーサビリティ情報システム(以下、牡蠣トレーサビリティ・システムと記す)」が導入されている。しかしながら牡蠣トレーサビリティ・システム導入プロジェクトの多くで導入期間が長期化したり、経済的・人的問題によりプロジェクト半ばで目的を達成することなく頓挫するケースが発生している。そこでトレーサビリティ・システム導入プロジェクトを成功させるための推進手順を詳細に網羅した牡蠣トレーサビリティ・システム導入方法論を確立することが本研究の目的である。 本年度の研究実績は以下のとおりである。(1)導入方法論についてトレーサビリティ・システム導入事例および情報システム構築事例を取り扱った文献を調査し、基礎知識の集約を図った。(2)関係事業者に対し予備調査を行い、牡蠣トレーサビリティ・システムに関する客観的な知見を得た。(3)すでに牡蠣トレーサビリティ・システム導入済みの地元牡蠣パック加工業者に対して導入方法論をヒアリングにより調査した。 次年度では、導入方法論の正当性および有効性の検証について協力および参考可能な企業を選定し、長期かつ詳細なインタビュー調査に移る。これにより牡蠣トレーサビリティ・システム導入方法論を獲得する。
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