研究概要 |
平成20年度は、昨年の調査結果を踏まえ、追加調査を継続しつつ、研究成果の公開に力を入れてきた。まず、複雑な技術体系を有する産業において、新規制の高い技術革新が必要とされる場合。企業間関係はどのように変化するのかについて、自動車排ガス技術の開発を事例に考察した。特に、技術の不確実性と複雑性に対して、研究開発に必要な知識ネットワークはどこから生まれてきたのか、と問題設定を行い、自動車メーカーと部品メーカーとの分業関係に焦点を当て事例研究を行った。 より具体的に指摘すれば、これまでの研究では、タスクの不確実性に対応し、自動車メーカーは周辺技術の開発(一部内製化も含めて)に取り組んでいたことが確認できたが、なぜそのような意思決定に至ったのかについて、歴史的経緯の調査とヒヤリング調査を中心に事例を構成した。排気浄化のための電子制御技術の開発について、自動車メーカーは事前に開発に必要な知識を持っていなかったが、社内でそうした知識を管理できる内製R&D組織を構築していたことが判明した。電子制御技術がエンジンをコントロールするという意味において、それまでの自動車メーカーと部品メーカーとの関係にも大きく影響を与え、その後における長期継続的・協調的・緊密な関係に基づく取引関係が一層強化されるようになったと推測される。なお、この研究成果は、「技術研究計画」(Vol.23, No.3)に掲載された。
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