本年度は、海外調査として8月6日〜11日にニューヨークへ行き、デザイン関運施設を見学し、8月31日〜9月2日にはソウルへ行き、サムスン広報館を訪問した。成果としては、論文を『立命館経営学』第47巻第4号2008年11月に「デザイン主導型企業の論理」というタイトルで掲載した。これは、デザインを戦略・経営の中心に据える米欧日の4社、すなわちターゲット(アメリカ)、アレッシィ(イタリア)Muuto(デンマーク)、±0(日本)の事例を取り上げ、そのデザイナー活用法やデザインプロセスおよびビジネスモデルの特徴を捉えたものである。また、ヘスケットやノーマンのデザイン理論にも言及し、その論点を取り入れた「デザインを熟知したデザイナーの活用」がデザインマネジメントの鍵を握ることを主張した.また、2008年6月29日には、広島国際大学で開催された「第55回日本デザイン学会春季研究発表大会」において「サムスン電子のデザインマネジメント」および「デザインとマネジメントの収斂 : 「デザイナンス」という新概念」というタイトルで、長沢伸也教授(早稲田大学大学院)と2件の共同報告をした。前者は、現在、韓国企業によるデザイン性の高い製品開発には目を見張るものがあり、中でもサムスン電子とLG電子が共通して掲げる「デザイン優先経営」に着目したものである。これは、「あらゆる商品とサービスをデザイン中心に開発する」ということである. 2000年にサムスン電子が、2006年にLG電子がそれぞれにこれを宣言した。製品開発において何か重要な要素があったとしても、それは優先せずにあくまでデザインを第一とし、それにそぐわないなら機能性を下げることも辞さない。こうしたデザイン優先経営によって、時代のトレンドを満たすことができる。イノベーションは常に顧客に焦点が合わされるのである。後者は、こうしたデザインマネジメントにおいてはデザインの科学化が必要であり、デザインとサイエンスを掛け合わせた造語となる「デザイナンス」を提唱するブリジット・モゾタ教授の論理を紹介したものである。また、2009年3月には、これらの研究成果の一部をまとめる著作物として、『グローバル企業のデザインマネジメント』という単著を学文社から刊行した。
|