前年度において『デザインマインドマネジャー 盛田昭夫のデザイン参謀 黒木靖夫』(日本出版サービス2009年)および『戦略的デザインマネジメント デザインによるブランド価値創造とイノベーション』(同友館2010年)という2冊の図書を刊行したが、この出版がきっかけとなり、本年度では専門誌への論文掲載とシンポジウムでの講演という2つの活動を行えることができた。まず専門誌への論文掲載については『宣伝会議』に「クリエイティブ資本は企業の経営資産だ」というタイトルの論稿を2010年4月1日号に公表した。社内でデザイナーを始めとするクリエイターをどのように活用したら最大の成果が得られるかについて提案した内容である。この論文執筆にあたっては、宣伝会議の副編集長から事前に取材を受けた。その際に、企業においてクリエイターを積極的に採用する動きが現在、活発になってきているので、そうした企業のマネジャー(トップマネジャー、プロジェクトリーダーなど)に向けて、クリエイターの管理法について示唆を与えて欲しいという要望があった。論稿はこれに応える形の内容となっている。また、2010年10月29日には、大阪商業大学において開催された「デザインマネジメント・シンポジウム」において「グローバル企業のデザインマネジメント能力」というタイトルで講演を行い、その後のパネル・ディスカッションにも参加した。台頭する韓国企業などに対抗するには、日本企業がデザインを経営資源として的確に管理し活用できるようなマネジメント能力の形成とビジネスモデルの構築が不可欠であるということがシンポジウムでの大きな主張となった。本年度におけるこの2つの活動は、日本におけるデザインマネジメント研究の促進に寄与するものと位置づけることができる。
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