本研究が主題とする「デザインマネジメント」は、経営学部とデザイン学部の両方の教育プログラムにおいて必要となる視点を提供するものである。経営学部生は経営者の候補群であり、デザイン学部生はデザイナーの卵たちである。そうした双方が同じ会社で働く場合、「デザインというものが経営戦略上、重要な経営資源である」という共通の認識がないと、グッドデザインによる差異化が図れないことになる。 アップルやサムスン電子などは、すでにこの事実(デザインベースの能力が貴重で稀少な存在であり、他社からの模倣が難しいものであること)に気付いており、デザイン優先のマネジメントを展開している。 一般に、デザインマネジメントの手法は、ラグビーアプローチと呼ばれ、マーケター、エンジニア、デザイナー、セールスマンが事業の最初からスクラムを組むような形で、意見交換を絶えず行いながら、1つの製品の開発に着手する。アップルを率いるスティーブ・ジョブズは、このラグビーアプローチを好んでおり、あらゆる分野の者との対話を繰り返しながら、iPodやiPhoneといった新商品を次々と市場へと送り出した。 実際にアップルが消費者から支持を受け、高いブランド価値を形成しているという事実から見出せることは、「デザインの価値を進んで受け入れて、その価値を会社全体で認め合うことが必要であり、それにはトップマネジャーの参与が不可欠である」ということである。 本研究では、こうしたデザインマネジメントについての理論構築を豊富な事例に基づいて行うことで、経営学部とデザイン学部において有益な「デザインマネジメント論」を提示することを目的としている。
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