本研究の目的は、製品開発および研究開発に関する技術知識が、いかにして組織内の他の技術者に移転するのかについて調査を行うものである。それを検証するために、主に二つの方法を取る。 第一に、電機・精密機械産業に属する企業について特定期間に、公開された全ての特許に基づいて、特許の発明人を追いかけた特許マップ・データベースを構築する。ここでの趣旨は、発明人を追いかけることによって、知識が組織内及び企業間においてどのように移転し、活用されているのかを知ることができるというものである。これについては、本年度は特許データの購入を行い、データベースの作成に取り掛かっているが、発明人の数が膨大であるため、引き続き次ぎ年度以降に作業を行う必要がある。なお、来年度は特定の企業に絞り、発明人マップを完成させ、分析に入る予定である。 第二に、特許マップ・データで扱う電機・精密機械産業に属する特定企業に対して、年度の中盤から技術者に対して複数回インタビュー調査を行った。特許マップ・データでは、発明人を追いかけることはできても、実際に知識がどのように移転したのかについての詳細を知ることはできない。よって、定量的な分析を行う前に、インタビューによって技術知識の移転ネットワークとイノベーションの関係性についての調査を行った。なお、次年度早々にも大規模な質問表調査を同社の技術者を対象に行わせていただくことになっており、本年度後半は質問表の設計を行った。これらの分析結果と、特許マップ・データとを突合することによって、相互補完的な分析を試みたいと考えている。 製品の同質化が進んでいる日本の電機・精密機械産業においては上市までのスピードが重要となるが、技術者間でいかなる知識移転ネットワークの横築が求められるのか本研究において明らかにしたい。
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