本研究の目的は、製品開発および研究開発に関する技術知識が、いかにして組織内の他の技術者に移転するのかについて調査を行うものである。それを検証するために、主に二つのアプローチを採用した。 第一に、電機・精密機械産業に属する企業について特定期間に、公開された全ての特許に基づいて、特許の発明人を追いかけた特許マップ・データベースの構築を試みた。本年度は購入した特許デー汐を用いてデータベースの作成を行ったが、発明人の数が膨大であるため、引き続き作業を行う必要がある。 第二に、特許マップ・データで扱う電機・精密機械産業に属する特定企業の上級技術者に対して複数回インタビュー調査を行った。特許マップ・データでは、発明人を追いかけることはできても、実際に知識がどのように移転したのかについての詳細を知ることはできない。よって、定量的な分析を行う前に、インタビューによって技術知識の移転ネットワークとイノベーションの関係性についての調査を行った。それらの知見をもとに、ネットワーク理論に関する論文を参考に質問票を設計した。何度もミーティングを重ねたのち、2008年12月に同社の技術者100余名に対して質問票調査を実施した。年明け以降は、質問票調査の結果をデータベース化するのに費やされた。来年度は質問票結果の分析に取り掛かる予定である。これらの分析結果と、特許マップ・データとを突合することによって、相互補完的な分析を試みたいと考えている。来年度は、質問票調査の分析結果を中心に、論文誌に投稿する予定である。
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