本研究の目的は、組織変革をもたらす個人がいかに育成されうるのかについて、個人の組織適応という観点から、明らかにすることである。 本年度は、(1)研究枠組みの構築のためにリーダーシップ開発や組織心理学に関する文献を含んだ広範な文献サーベイ(2)(1)に基づいたデータの分析(3)1)に基づく新たな調査の実施とデータ分析を行なった。 (1)については、分析の枠組みを完成させ、(3)でその一部について質問票調査を実施した。また(3)の調査は現在進行中で行なわれており具体的なデータ分析と向時進行中である。文献サーベイの結果についても、現在レビュー論文の形で成果とすべく執筆を行なっている。具体的成果は08年度中を予定している。 (2)については、(1)の枠組みの一部に基づき、組織における仕事場面において個人の成長を促す経験(フロー経験)が、どのような条件の下で経験されるのか、またこの経験が変革志向の人材の要件と目される職務熟達にどのように影響を与えるのかについてサーベイの結果をまとめ学会・論文の形にまとめた。 (3)については、個人の組織適応に影響を与える育成方針(社会化戦術)と、当該組織の組織文化との関連について調査を行い、現在分析中である。 研究の上で(1)はもちろん重要であるが、(2)(3)によって、個人の組織内での変革的志向に影響を及ぼすと思われる職務要件や経験、育成のあり方、及び文化を初めとする組織のマクロ要因などの効果について、実証的な裏づけを得ることができる。同時に、文献サーベイに基づく国際的な基準の測定ツールを用い、わが国での実効性や妥当性を検討し、より適切な測定ツールを確立する上で必須の取り組みである。
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