本研究は、NPOへの融資によるコミュニティ投資の可能性を明らかにすることを目的としている。平成19年度はNPOの融資需要に関する調査を行った。第1に文献調査として、NPO融資に関連した先行研究を収集するとともに、NPOに融資を行っている金融機関や地方自治体を調べた。第2に、NPO・社会的企業、金融機関、中間支援組織に聞き取り調査を行い、融資の実態を明らかにした。第3に、文献調査と聞き取り調査を踏まえて、NPO法人を対象に質問票調査を実施した。これらの調査結果をまとめて、2008年3月に日本NPO学会大会において発表するとともに、ウェブサイト上にも公開した。調査結果の要点は以下のとおりである。 NPOや社会的企業の資金需要は大きいが、融資需要は現段階では部分的であり、事業分野や資金使途には偏りがみられる。質問票調査によれば、融資経験のあるNPOは約3分の1で、そのうち1割強は5回以上融資を受けており、比較的多くのNPOは融資を受けた経験がある。ただし融資を受けられるのは、収益事業で利益を生み出し確実に返済の見通しを立てられる事業分野が主である。 短期的なつなぎ融資の需要は金融機関によってある程度満たされているものの、事業規模拡大・組織開発に向けての設備投資などの需要に対しては、金融機関の融資は充分に対応できていない。 経理・税務、財務管理で専門知識が不足していることも、NPOが融資を受けにくい一因と指摘されているが、専門家をきちんと揃えているNPOとそうでないNPOとがあるため、特に後者のNPOについては中間支援組織や自治体、金融機関などの支援が求められる。
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