今年度は、アメリカでの聞き取り調査を行い(2009年8月~9月の15日間)、ワシントンDC、フィラデルフィア市、シカゴ市の3都市を回った。コミュニティ開発金融機関(CDFI)、連邦政府機関、経営コンサルタント、CDFIから融資を受けているNPO、アドボカシー組織などを訪問し、聞き取り調査を行った。日本ではNPOへの融資があまり進んでいないのとは対照的に、アメリカではCDFIによる融資が盛んに行われており、また数多くの経営コンサルタントがNPOに助言・指導していること、そして地域再投資法に代表されるように政府のコミュニティ開発金融政策が充実していることが、NPOへの旺盛な融資を下支えしているという構図が見えてきた。 アメリカでは黒人やヒスパニックなどエスニック・マイノリティの多くが貧困階層に属し、銀行の金融サービスを利用できず、さらには彼らの集住するコミュニティでは社会サービスが貧弱なため、いつまでも貧困から脱却することが難しい状況におかれている。こうした社会的排除層に対して直接融資するマイクロファイナンスや、貧困地域で活動するコミュニティ開発法人(CDC)などのNPO/社会的企業への融資は、貧困問題の解決や社会的包摂に少なからぬインパクトを与えている。こうしたアメリカでのコミュニティ開発の方法論は、社会的背景の異なる日本にそのまま輸入できるものではない。しかし、市場原理だけでは資金が十分回らないNPOや社会的企業、貧困層などに有効に資金を供給し、経済民主主義と地域経済の活性化を促進することは日本でも必要であり、アメリカの経験を何らかの形で生かすことが可能ではないかと考えられる。
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