本研究では、当初の課題に加えて、ものづくり日本の製造業におけるサプライチェーンの延長として、製品リコールやセル生産といった課題についても研究を行った。まず、当初の研究課題であるサプライチェーンにおける企業間情報システムの役割に関して、協力企業との兼ね合いでアンケート調査の実施が遅れたが、現在データを収集しているところである。したがって、その研究成果は二年計画の二年目に当たる平成20年度の研究実績に含まれる。一方、企業間情報システムの研究の一環で日本の製造業を幾社か訪問したところ、現在企業がサプライチェーンと関連して最も関心を抱いている課題の中に、製品リコールとセル生産が含まれていた。そこで、ある製造業において、製品リコールに関する社会的責任についてアンケート調査を行った。データ分析を行ったところ、一つの企業の中でも、顧客と直接接する営業側と、フィールドにはあまり出ないが裏方で支援する品質管理側では、製品リコールについての意識が大きく異なることが判明し、実践的な効果として相互理解へとつながった。また、大量生産の考えに基づき、ベルトコンベアを利用した流れ作業が当然効率的だと考えられていた機械工程のいくつかが、現在、消費者の嗜好の多様化に合わせて製造ラインを容易に変えられるセル生産へと置き換わりつつある。セル生産は人が中心の生産工程であり、そのため機械と異なって学習による改善活動が活発で、現場で作業する人々の意見に基づいた部品の配置換えや作業位置の工夫などがどのように無駄を減らして生産性の改善につながっていったかを研究した。両研究ともすでに英語論文が存在しており、それぞれ査読つき国際会議で口頭発表を行った。国際会議でのフィードバックに基づいて、現在論文誌への投稿の準備を進めている。
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