昨年同様、本研究では、当初の課題に加えて、サプライチェーンの延長として、環境問題を意識した製品リサイクルといった課題についても研究を行った。まず、当初の研究課題であるサプライチェーンにおける企業間情報システムの役割に関して、ある大手小売業の協力のもと、海外でそのサプライヤーを対象としたアンケート調査を実施し、分析結果を国際会議で口頭発表した。また、同小売業の協力のもと、街頭で消費者を対象とした環境に関する意識調査を行い、同様に分析結果を国際会議で口頭発表した。サプライチェーンで考えると、前者が小売業とその上流の関係、後者が小売業とその下流の関係と捉えることができる。前者の主要な結果として、情報システムを導入するサプライヤーが必ずしもその効率性を求めて導入しているわけではなく、顧客との関係も重視していることが分かった。また、後者の特徴的な結果として、ある小売業が環境問題に取り組んでいることを意識して買い物する消費者と、意識していない消費者では、その小売業での購入金額に有意義な差はなかった。また、ある製造業において、製品リサイクルに関する社会的責任についてアンケート調査を行い、国際会議で口頭発表を行った。データ分析の結果として、一つの企業の中でも、管理職と非管理職の間では、製品リサイクルについての意識が大きく異なることが判明し、実践的な効果として相互理解へとつながった。また、日本における電化製品および電子機器のリサイクルの現状について調査を行い、循環型サプライチェーンの構造を、家電、PC、携帯電話の三業界に分類して、国際会議で口頭発表を行った。さらに、これらの研究の過程でフィールド調査をする機会に恵まれ、日本企業の戦略について知見を得たので、それを二つの論文にまとめた。一つはブルーオーシャン戦略の枠組みからの説明を試み、もう一つはグローバル競争という観点から論述した。
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