本年度は計画に従い、引き続きデータ収集をおこなうと共に、中間報告として論文を執筆し発表した。データ収集の範囲としては主に市場関係者を中心に、多様な業態の小売店および大手チェーン店の商品企画担当者に対して聞き取りを行っている。 まず第1に、従来120-200工程あるという製造工程についてであるが、この工程数は完全にゼロから作ったときの数字であり、実際の眼鏡製造工程に即してみた場合、かなり少ない工程で、製造が可能であることが、独自の取り組みを行っている製造小売店への調査で確認された。 また、産地のいくつかの中心的企業を除いては、独自の直接の営業スタッフを持たず、大手のメーカーからスピンアウトした企画卸が、産地と市場をつなぐうえで大きな役割を果たしていることが確認された。これは単純に市場関係者が産地の製造業者を知らないという理由によるものではない。例え直接、面識があったとしても生産管理のためには産地の事情に詳しい企画卸を挟むことによって、リスクを回避するということが行われていた。 しかし、このような形で生産管理が行われているにも関わらず、多くの場合当初の予定通りの納期であがってくることはむしろ少なく、納期どおりの納品は3-4割であるという実態も明らかになっている。これは発注側企業の意思決定プロセスの影響もあるため一概にいえないが、産地の分業体制の中における生産管理は極めて難しいものであることが指摘される。 メガネ枠の製造は産地の分業体制の中で実施されていることは間違いないが、その製造工場の選択権は、中間に位置する企画卸に有ると考えられる。この企画卸が選好する工場は安定した受注を背景に、高い業績が期待できる可能性が高く、生存確率も上がってくることが指摘できる。 また、産地の企業内で共有されている行動様式の影響も指摘された。これらを定量的に測定し、産業。業界内の特性をモデルに組み込んでいく必要性があることも明らかになった。
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