本研究の目的は、大規模で所与の構造を持たないコミュニケーションデータから説得プロセスに関する有用な特徴を明らかにする枠組み、分析手法を提案し、企業の債権回収に関わる会話データの解析を通じて提案手法の有用性を検討することである。従来、会話データのように構造を持たないデータの定量的解析は単語の利用頻度といった単純な解析にとどまるものが多い。本研究は、単語の利用頻度といった静的な文章の特徴だけでなく、動的なコミュニケーションプロセスの特徴を明らかにする枠組み、分析手法を提案する。その際、企業の商品購入代金の支払い遅延に関して顧客と交渉する大規模な説得コミュニケーションデータを対象とする。これには、企業と顧客との膨大な会話データが記録されており、これらから説得プロセスに関する有用な知見を発見することが企業にとって重要な意義を持つ。つまり大規模な支払い遅延顧客との会話データから、かれらを説得するためのコミュニケーションプロセスを明らかにする。その際、会話データだけではなく、録画データなど様々なデータソースを積極的に活用する。本研究は、説得コミュニケーションプロセスのモデル化から、解析システムの開発、実データによる実証までを行う包括的なテキストマイニング研究である。
|