アジアから出発した企業群は技術的、資金的な困難さにもかかわらず、近年では韓国や中国、台湾発の企業においてその成長が日覚ましく、先進国企業と肩を並べるだけでなく脅威を与える存在になっている。特にエレクトロニクス企業において技術的にも短期間で急成長を遂げた企業が目立っているが、アジア企業の成長背景、特に、技術力の蓄積やイノベーション能力の中身については殆ど解明されていない。アジア企業の急速なイノベーション能力の蓄積の解明は、類似した環境から出発する諸国の企業だけでなく、先進国の企業にとっても示唆点が大きいものと考える。本研究では、これまでの三星やLGの研究を通して明らかにした、韓国企業のイノベーション能力の蓄積にとっての人的ネットワークの意味合いや重要性を、中国や台湾企業のケースに広げて考察している。今回の韓国(Open Tide : 三星系列コンサルティング会社)、および、中国(ハイセンス、オークマ)の追加調査の結果、中国ではイノベーション能力の構築において人的ネットワークが重要であることは共通した認識であったが、その使われ方が異なっている点を明らかにすることができた。さらに、三星電子が求めるイノベーションは製品開発という発想から新機能を持つ製品群の開発に移り変わっているのに比べ、中国の企業では依然として製品開発がメインであり、その結果、研究者の管理方法やイノベーション創出方法が異なる点を明らかにすることができた。
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