本研究は、日本におけるアセンブラーとサプライヤーとの企業間関係(以下、サプライヤー関係)において、1990年代以降のサプライヤー関係の変化が、中小サプライヤーの存立にいかなる影響を及ぼすか、またそれにより中小サプライヤーがいかなる行動をとるかを理論的・実証的に明らかにすることを目的としていた。具体的な検討課題は、(1)1990年代以降におけるサプライヤー関係の変化がいかなるものか、(2)中小サプライヤーが方策の1つとしてとりうる連携が中小サプライヤーの存立にいかなる効果をもたらすか、(3)以上の(1)と(2)の検討事項から、企業間関係論的アプロチーからの中小企業存立論という観点からいかなる理論化を図ることができるか、の3点であった。 それら3点は現時点において研究途中であり、次年度も引き続き研究を行う予定である。次年度早々に、サプライヤー(下請制)研究の体系化と連携の事例に関する論文を成果として上梓する予定である。研究を進めていく過程で、中小企業にとって、そもそも大企業の行動による影響や大企業との公正な取引に対する要請度合いを調べる機会に遭遇した。これは、下請制の議論でみられたように、中小企業(中小サプライヤー)と大企業(アセンブラー)との企業間取引関係における公平性の問題を検討することにつながる。調査の結果、法的整備や人材確保に関する要請も高かったが、それと同じくらいに大企業の行動抑制(具体的には大企業の紳士的な対応や大企業の介入を防止など)や、大企業との公正・正当な取引の実現に対する要請が非常に高いことが明らかとなった。今年度はこの成果をまとめ、論文のかたちで上梓した。
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