研究概要 |
本年度は,連結会計移行後における企業グループ再編の実態を捉えることを主目的とし,次年度以降の実証分析を行うためのデータベースの作成を行つた。 連結財務諸表中心のディスクロージャー制度が導入された2000年3月期以降を見ると,M&Aの主たるプレーヤーはサービス業,ソフト・情報の産業に属する企業が多くなっているが,それ以前から一貫して電気機器,化学,機械などの製造業も多く見られる。とりわけ電気機器企業においては,事業領域の拡大に応じて子会社を設立した企業も多く見られ,2002年のITバブル崩壊以後は事業再編戦略の中で,こうした子会社を整理・再編するものも見られた。また,M&Aの形態も2004年頃までは営業譲渡によるものが比較的多く見られたが,2004年以降は資本参加や買収によるM&Aが多く見られるなど,形態の変化が起きていることが明らかになった。すなわち,企業グループの再編が「グループ内の事業構造の再編」から,「他の企業グループの事業を行う子会社の買収をも含む事業構造の再編」に移行しつつあるのだと考えられる。そして,これにより企業内部におけるマネジメント・システムが変化しつつあると考えられる。 本研究では,主として同一企業グループ内における再編の実証分析を行う予定であったが,以上のような状況を踏まえ,電気機器メーカーのグループ(事業)再編を取り上げることで,本研究課題の当初の目的がより明らかになると考えている。よって次年度以降では,以上のテーマから発展した研究成果を論文として報告する予定があり,この他にも論文または学会報告を行いたいと考えている。
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