本年度は当初予定していた財務データを用いた実証分析では研究成果として有用な内容を導くことはできなかった。一方で、ケーススタディによる研究成果を論文として1編作成した。 論文では、Fligstein〔1990〕が論じている制度変化による企業行動の変化を社会学的視点から分析した理論を用い、日本の電気機器メーカーが連結財務諸表中心のディスクロージャー制度への移行、コーポレート・ガバナンス面でもステークホルダー重視から株主重視へと移る中で、いかに組織の再編を行い、それに伴って経営管理システムとしての管理会計制度がどのように変化してきているかについて論じた。これにより、会計制度や法律のような体系化された目に見える制度が変化することによってだけでなく、投資家や利害関係者の企業観の変化が企業行動や企業内部の管理システムに影響を及ぼしうることを指摘できたと考えている。 また、これとは別に引き続き資料、データベースの作成を続けており、これらを元にした精緻化した実証分析が行えるように準備を進めている。
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