研究概要 |
本研究は,1990年代後半から2000年代初頭に見られた法制度の改正,会計制度の変更(特に連結会計制度への移行)などによる企業行動の変化を明らかにしようとした。特に,企業価値創造のためのグループ再編を中心に,現代の日本企業がいかにして環境に適応し,その結果としていかなる経済帰結を得られているのかを明らかにしようとした。その成果は以下のとおりである。 第一に,企業を取り巻く外部環境の変化は企業経営者の観念に影響を与え,M&Aやグループ再編をもたらした。第二に,企業構造の変化に伴い,企業内部のマネジメント・システムにも大きな影響を与え,企業価値創造に有効と考えられている業績評価指標の導入が進められていった。第三に,上場企業を対象に実施したアンケート調査によると,グローバル企業と国内中心の企業とでは,意識する利害関係者に違いがあり,それがマネジメント・システムの違いにも表れている。また,どのような企業群でも日本的経営の特徴されてきた雇用環境や取引関係は維持されており,企業価値創造のベースが従来のマネジメントのあり方にあるとともに,外部環境の変化にうまく対応しているとも解釈できる。
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