研究概要 |
一昨年度はダブルバウンド形式の特殊形である既存の1.5バヴンド形式データを用いて分析し,昨年度は人工的に生成したダブルバウンド形式データを用いて分析した.これを受け,本年度は,1.ダブルバウンド形式の特殊形である既存の支払いカード形式データの分析,2.ダブルバウンド形式データを用いたシミュレーション分析,3.選好意識調査では行動変化意向データを収集できるがこれと関連させ実際の行動変化に着目した分析,を行った.1.では,一昨年度の既存データの分析を新たな角度から捉え直し,説明変数に(1)客観的な変数,(2)潜在的な変数,を採用,意思決定方略に(1)補償型,(2)非補償型,を採用,の組み合わせからなる大きく分けて4つのモデルを構築した.モデルを支払いカード形式データから得られた行動変化意向への適合という観点から評価したところ,適切な非補償型モデルや潜在的な変数を採用したモデルが優れていることが示された.2.では,昨年度の内容を発展させ,ダブルバウンド形式データを効用関数の誤差項に関する複数の仮定に基づいて人工的に発生させ,それを複数の仮定に基づいたモデルで分析を行うことを目指し,理論的な分析フレームワークを完成させた.3.では,1.の分析では選好意識データでは行動の変化意向を表すことに着目したが,実際の複数時点の断面データから行動変化の側面を見ることも重要と考えた.そこで,中京都市圏の1971年と91年のパーソントリップ調査データを用いて非集計交通手段選択モデルにおける地域移転性を向上させるために修正された選択肢固有定数項の時間移転性を分析した.その結果,修正された定数項の移転性は,地域属性はもとより,過去の交通状況による慣性,サービスレベルを変化させる交通手段,サービスレベルを変化させる方向,にも影響を受けることが示された.
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