本年度は台湾における小売国際化の特徴を把握することを目的として、マクロとミクロの2つの側面から台湾の小売発展を分析した。まず、マクロ分析では時系列から台湾における流通発展を考察し、台湾における流通近代化と国際化との関係を明らかにした。また、業態別で台湾における小売業の現状を考察し、主要業態では上位企業による寡占的な状況が多いことが確認できた。さらに、現地資本と外資系資本の特徴に関して、それぞれの資本企業には強い業態分野があり、大まかに言うと、日本は百貨店、欧米は総合量販店、台湾企業はCVSや家電専門店分野に強いことがわかった。参入時期について、上位外資系企業の参入は1980年代後半から1990年代前半に集中し、その大半は現地企業との提携企業であった。現地資本の特徴として、ほとんどの上位小売企業は台湾の大手企業グループによる多角化参入であり、特に食品メーカーや家電メーカーなどの製造業による製販統合が多かった。さらに、近年ではCVSを代表として外資との提携による第3国への連続的な国際化が展開され、その結果進出先の国の小売構造を変革させようとしている。 そして、ミクロ分析では台湾で他国にないCVS駆動の小売国際化プロセスの全貌を明らかにするために、2大コンビニエンス・ストア・チェーンである、セブン-イレブン統一超商と全家便利商店(台湾ファミリーマート)を取り上げた。そのうち、セブン-イレブン統一超商は近年に多くの海外ビジネスを台湾市場に導入し、フィリピン、ベトナム、中国など海外への進出も果たし、台湾小売の国際化と台湾企業の国際化に対する貢献が大きい。台湾全家便利商店の場合は日本ファミリーマートの経営ノウハウを導入し、台湾におけるイノベーションを引き起こしながら、日本と台湾で融合した経営ノウハウを中国へ移転した。このようなCVS駆動の国際化プロセスは本考察で得た台湾の小売国際化の大きな特徴である。
|