研究概要 |
今年度は、垂直的差別化モデルを用いた音楽CDと音楽配信サービスの競合の分析について、次の拡張を行った。まず、高品質財市場において複数のCDショップが数量競争を行い,低品質財市場において複数の音楽配信サイトが同一の音楽ファイルを配信し価格競争を行うと想定した。前者はクールノー競争市場となり、後者は価格が音楽配信サイトの卸売価格に一致する純粋ベルトラン競争市場となる。この寡占小売市場における均衡を導出し、自由参入によりCDショップ数を内生的に求めた。次に、下流の小売市場における均衡を考慮して、上流のレコード会社の利潤を最大化する2つの市場への卸売価格を導出した。そして、音楽配信が存在しない場合と比較すると、CDショップ数は減るものの、レコード会社の均衡利潤は必ず増える、すなわちレコード会社にとって音楽配信の導入が必ず望ましいことが分かった。ただし、この結論は音楽配信導入前に品質への限界的評価が低く、CDを購入していない層がある程度大きな割合で存在することや、音楽配信の不正コピーが出回りその影響で売上が減ることはないという仮定に依存している。この仮定を外すと、結論が変わりうることに注意しなければならない。以上の結果を論文にまとめ、学術誌への投稿準備中である。
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