平成19年度は、主に文献研究に当てられた。文献研究は大きく、歴史に当たる部分と近年の研究に当たる部分の2部から構成される。まず、歴史にあたる部分は、本研究のテーマである、消費者による新製品の採用過程に関する研究が、消費者行動研究やマーケティング研究において、歴史的にどのような経緯をたどってきたのかということについてレビューしたものになった。そこから得られた知見としては、今日の消費者行動研究の中では、本研究のテーマとなる、新製品、特にデジタル家電の新製品に対する消費者の行動を十分に説明できる有用な研究枠組みがないということであった。 次に、近年の研究に当たる部分については、歴史研究を踏まえた上で、消費者による新製品の採用過程に関する研究が今後どのような方向性で行われるべきかという考察を行った。具体的には、認知心理学におけるアナロジーという考え方を用いることによって、今日の消費者による新製品の採用行動をうまく説明できる可能性があり、そして企業が取るべきマーケティング戦略への有意義な示唆を行うことができる可能性ある、というものである。 さらに、文献研究と平行して事例研究も行った。事例として取り上げたのは、薄型テレビ、シャープ・アクオスのマーケティング戦略である。この事例研究を通じて、新製品としての薄型テレビを消費者が購入する際に、いかに既存知識を適用しているのかということについて有意義な考察が得られた。
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