日本の卸売商業の業態研究というテーマにしたがって、平成19年度には主に文献調査及び実態調査を中心に調査を行った。文献調査の結果、従来の卸売商業研究のほとんどが、卸売構造と卸売商業者の機能に注目しており、卸売企業の戦略的行動や業態に関してはあまり議論されなかったことが確認された。この文献調査の結果は、「日本の卸売商業研究の現状」という論文にまとめた。 そして、その文献調査から得られた問題意識に、さらに理論的視点を加えて、「卸売企業のプロセス革新に関する研究」を執筆した。この論文では、卸売企業が物流システム導入を行う背景には、取引先との間にパワー関係と共同革新という相反する論理があり、現在の卸売企業の物流システム導入は小売企業との間で共同革新の形で進んでいる傾向があることが主張された。この結果は、卸売企業を小売企業との間で戦略的関係構築に積極的な卸売企業と消極的な卸売企業と分類する基準を提示するものであり、卸売企業の戦略行動をタイプ分けしたうえで、その変化をダイナミックに捉えようとする卸売業態論研究につながるものと考えられる。
|