研究概要 |
戦前の百貨店化は、販売方法のイノベーションや取扱商品の拡大を通して成長してきたのに対し、高度成長期の百貨店は、多店舗展開することによって、売上高および店舗面積を急激に拡大させてきた。戦前の呉服店から百貨店への移行が百貨店の第一次拡大期であるとすれば、高度成長期は百貨店の第二次拡大期であったといえよう。高度成長期にみられた百貨店の拡大は、売上構成比が最大の婦人服部門はもちろんのこと、各部門の売上高と売場面積の拡大、さらにはそれに伴う取扱商品数の急激な増加によって支えられていた。とりわけ、家具や家電さらには食器などを扱う家庭用品部門の売上高は、昭和31年の263億円から昭和40年には1,255億円へと増大するなど、この時期の特徴を顕著にあらわしている。家庭用品部門が拡大した要因として、卓上ポットやホーロー鍋などの新しい商品を生産者や卸売業者と連携しながら開発したことや、台所の洋風化にともなう百貨店の生活提案、あるいは消費者の可処分所得の増加などが考えられる。今年度の研究では、このような百貨店の家庭用品部門の拡大過程を先行研究の整理によって確認し、百貨店関係者へのインタビュー調査によって百貨店内部ではどのように捉えられていたのかを明らかにした。また、高度成長期には、ギフト売上の増大が家庭用品部門の拡大や外商売上の増加を側面から支えていたという事実を発見することができたが、その因果関係については、次年度の検討課題としたい。
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