今年度は、高度成長期における日本の百貨店が、効率性と高級化を同時に追求しながら発展してきた過程を、主として家庭用品売場の変化を通して考察した。高度成長期の百貨店は、既存百貨店が店舗を大規模化し、多店舗展開していくとともに、電鉄系百貨店や地方百貨店が次々と開店することによって、スーパーなどの新しい小売業態が生成したにもかかわらず、売場面積を急激に拡大し、売上高を大きく増大してきた。 このような高度成長期の百貨店の成長を支えたのは、衣料品部門の拡充と家庭用品売場の発展であった。衣料品部門は、既存研究で一部明らかになっているようなアパレル卸の活用と、海外ブランドを日本に紹介し特選部門を設置することによって、売場面積と取扱商品数を急激に拡大させてきた。一方、家庭用品売場は、ギフト市場を百貨店が取り込むことによって、百貨店業態の高級化を図りながら効率的に経営することに成功した。つまり、家庭用品を外商がギフトとして取り扱うことによって、ストアイメージを格上げしながら1度に大量の商品が販売されるため、効率的に売上を上げることが可能となったのである。 一般的に、店舗規模の拡大と高級化はコストを上昇させるため、発展のスピードを弱める。ところが、日本の百貨店の家庭用品売場で顕著に見られたような外商によるギフト販売は、効率性と高級化を同時に追求することを可能にし、高度成長期の百貨店の発展の原動力となっていたことが、本研究から明らかになった。
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