研究概要 |
わが国法人における役員給与支給では機会主義的なお手盛り支給が横行すると考えられている。そしてそのようなお手盛り支給を予防する目的も兼ねて平成18年の税制改正がなされたが、依然として類似業種、同規模の法人の報酬等を基準として損金算入限度額計算額を行っている。役員給与の損金算入限度額計算において、本来であれば当該企業の役員の実態を示す諸資料によって総合的に損金算入限度額を算定すべきであると考えられるため、現行法規定は問題なしとしない。そこで本論文では1, 265名の役員報酬の支給データを用いて、法人と役員との個別的事情とはいかなる要因を指すのかについて実証水準で明らかにした。 本論文では役員の個別的事情として持株比率・通算役員年数・常勤か否か・同族か否かをとりあげ、支給される役員報酬額の多寡との関係を分析している。そして中小法人における役員報酬の支給行動にういて、役位別・業種別に分析した結果、次の結論を導出した。(1) 役員報酬額の分布特性にようて役位別に2グループに分かれるが、そのグループは監査役や会長などを含む代表権者等と、平取締役や使用人兼務役員を含む専務常務等である。(2) 役員報酬額の多寡は企業規模と正の相関があり、それは全ての役位・全ての業種にあてはまる。(3) 製造業と販売業において代表権者等へ支給される報酬額の多寡は持株比率の多寡と正の相関がある。(4) 建設不動産業とサービスその他の業種において代表権者等へ支給される報酬額の多寡は通算役員年数と正の相関がある。(5) 使用人兼務役員へ支給される報酬額の多寡は従業員賞与と負の相関があり、それは全ての業種にあてはまる。
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