平成18年に実施した東京証券取引所1部上場企業に対する郵送質問票調査のデータに基づく分析を実施し、学会での報告及び論文での発表を行った。この研究では、近年の日本企業における成果主義的な報酬制度と会計的業績評価とのリンク(会計的業績評価情報の利用)について、それらを、主として人事管理制度の機能を強化する意図を持ったものと、主として業績管理制度の機能を強化する意図を持ったものとに、制度適用対象や制度導入年度の違いを視点に峻別し、加えてそれぞれにおける会計情報の利用の仕方の違いを初めて明らかにすることができた。この分析結果により、日本企業のマネジメント・コントロールの仕組みが、単なる欧米型の管理制度を模倣するものでもなく、また旧来からの日本型の管理制度をそのまま踏襲するものでもないことを実証的に明らかにすることができた。 これら統計的分析と並行して、大規模企業の人事担当者に対する、企業実務(成果主義的制度とそこでの会計情報の利用)に関するインタビュー調査を開始し、平成19年度は4企業にインタビューを行うことができた(これらのうちの一部は、科学研究費補助金による旅費の補助に基づくものである)。当該インタビュー調査については、平成20年度以降も、新たな研究サイトでの調査も加え、継続していくとともに、これら調査データの比較分析等を通じだ、理論(モデル)構築を開始していく予定である。
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