本研究の目的は、利益の構成要素の情報内容について、分散分解アプローチを用いて実証的に検討することにある。このことによって、利益情報の役割・機能をこれまでよりも深く検討し、理解することを目的とする。 このような目的を達成するために、本年度においては、次のプロジェクトを中心に研究を進めた。すなわち、現行の日本の損益計算書を念頭におき、営業利益、営業外損益、特別損益といった利益の構成要素によって、どのように情報内容が異なるかを比較検討する。このような研究は、従来からしばしば行われているが、これまで分散分解アプローチを適用した研究は存在していない。この研究は現在、検証中であり、次年度に投稿・公表予定である。 また、研究を進めるにつれ、M&Aなど企業の成長戦略に応じて企業を分類し、そのような類型に基づいて検証することが有意義であると認識するに至った。つまり、企業を戦略により類型化した上で、上記の利益の構成要素の情報内容にどのような違いが生じるかを検証するのである。これに関して、研究発表にあるように学会において研究報告を行った。また、その後、M&Aと会計に関する研究をレビューするとともに、サンプルの特定化を進めている。 最後に、今年度は、StataおよびMATLABといったソフトウェアの習熟にも時間を割いた。すなわち、これらのソフトウェアを利用した分散分解アプローチを実行するためのプログラムの開発にも取り組んだ。このことにより、今後、再検証を行うスピードが大幅に改善されるものと見込んでいる。
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