1. 比例ハザードモデルの共変量の検討 モデルの前提である比例ハザード性(時間に関係なくハザード比が一定)を満たす共変量(財務指標)について検討し、財務困窮企業の財務指標の特性(財務指標が似たような値をとること、異常値・欠損値が多いこと)と、財務指標そのものの特性(連続変数であること)が、その前提の成立を困難にさせていることが明らかとなった。また、財務困窮企業が倒産に至るまでにはいくつかの段階を経ることと、段階ごとに有意な変数が異なることが明らかとなった。次年度では、サンプルセレクションを精緻化し、検討すべき財務指標の数を増やして、引き続き検討を行う。併せて、財務困窮企業が経験するいくつかの段階とタイミングを特定し、段階ごとに共変量の検討を行う。 2. 倒産の可能性の高い状態の検討 財務困窮企業のみをサンプルとする本研究では、財務困窮企業の定義、範囲をどのように設定するかが重要になる。そこで、倒産企業のZスロア(財務困窮状態を示す指標)を調査したところ、倒産企業の倒産直前期のZスコアが相当低い値(財務困窮度が相当悪化した状態)であることと、さらに数期前からその状態が継続していることが明らかとなった. 加えて、国際学会に参加し、最新のモデルを用いた実証研究など関連する研究の国際的な動向を調査した。
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