最終年度である今年度は、比例ハザードモデルによる企業継続能力評体モデルの構築に向け、財務困窮企業をサシプルとして生存時間分析(コックス回帰分析)を行った。分析の結果、先行研究で有意とされた成長性、資本効率、営業効率、資産効率などに関連する8項目40財務指標の中から、5つの財務指標(当座比率、支払手形回転日数、有利子負債利子率、売上高経常利益率、株式時価負債簿価)が財務困窮企業の生存時間に影響を与える変数(共変量)として見いだされた。このうち「有利子負債利子率」のハザード比は約2倍と他の共変量よりも高い値となり、財務困窮企業にとって有利子負債ないし利子費用が相当の負担とたっているとする一般的な理解と一致する結果となった。また、比例ハザードモデルに組み込まれた共変量(財務指標)と単変量解析で統計的に有意とされた関連指標をもとに財務困窮状態から倒産に至るまでのプロセスを導出し、当該プロセスが一般的に理解可能なものであり、財務困窮状態からその後倒産した企業と倒産しなかった企業の分岐点を的確に示すものであることを明らかにした。本研究では、時間的制約から、別のサンプルを用いての当該モデルのパフォーマンスの検証を行うことができなかったが、比例ハザードモデルを用いても企業継続能力評価モデルを構築することができる可能性を示すことができた、と考えている。なお、以上の研究成果については、2009年11月に開催されたアジア太平洋国際会計学会(ラスベガス)において報告を行っている。
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