研究概要 |
本研究の目的の第一点は,会計研究で用いられてきた「利益の質」を構成する特性を明らかにすることである。本年度は「利益の質」に関連する文献研究を行い,多様な「利益の質」の定義およびその測定尺度の違いを確認し,特に,利益の質を規定する特性として取り上げられることの多い,利益持続性に関連する先行研究の整理を行った。 会計利益の質は会計研究において従来から議論されながらも,それを規定する特性は何かについて特定の定義があるわけではなく,研究に応じて様々な定義と測定方法が用いられている。例えば,先行研究は,利益の時系列特性(持続性,予測可能性,変動性),会計発生高やキャッシュフローとの対応関係,株価関連性(利益反応係数),収益と費用との対応関係などを用いて利益の質を測定している。また,先行研究で用いられている利益の質を規定する特性の中には,持続性と予測可能性のように,条件によっては相互に矛盾する特性も存在する。 利益持続性についてみてみると,利益がpermanentな要素とtransitoryな要素から構成されると認識されている点は,多くの研究に共通する。しかしながら,その定義と測定方法はひとつではない。本研究では,利益持続性の測定方法は,1)時系列モデルを用いて測定する,2)時系列モデルから推定した係数と資本コストを用いて測定する,3)財務指標などの代理変数を用いて測定する,4)株価との統計的関連性から測定する,の4つの方法があることを確認した。
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