研究概要 |
本年度は研究の1年目につき,先行研究のサーベイ,予備的な検証に多くの時間を割いた。さらに,来年度の実証分析の前提として,業種分類が会計の実証研究に及ぼす影響について考察する研究を行った。この研究は,2007年9月に名古屋市立大学経済学会のディスカッションペーパーとして刊行しており,同年11月のディスクロージャー研究学会の自由論題の部で報告した(現在,同学会誌へ投稿中)。 上記研究では,日経業種分類,東証業種分類,世界産業分類基準による分類の概要と特徴を述べた後,いずれの分類の信頼性が高いのかについて分析した。その結果,企業業績,成長性,株式市場関連の指標は各業種分類によってカテゴライズされた企業群の同質性に差異が観察されない一方,企業規模,流動性,資本構成,資産効率性,営業サイクルに関連する指標は日経中分類・東証中分類を用いた場合により同質的な企業が構成されており,これらの分類の信頼性が相対的に高いことが示唆された。さらに業種分類が,Cross-sectional Jonesモデル(DeFond and Jiambalvo 1994)による裁量的会計発生高の推定に及ぼす影響について検証した。各業種分類を用いて推定された裁量的会計発生高の間にはそれぞれ強い相関関係が観察されたが,回帰係数の有意性からは,日経中分類・東証中分類を用いた場合により信頼性の高い裁量的会計発生高の推定が可能になることが明らかとなった。
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