本年度は、理論研究を進める上で必要となる文献調査や先行研究・情報の収集とレビューを進めた。同時に、次年度以降に進める予定である実証研究の基礎データとなるわが国企業が導入しているストック・オプションに関する開示資料の収集と整理、および基礎的分析を進めた。その際、株式報酬を利用している企業や株式報酬の価値評価業務に携わっている企業等にもヒアリングを行い、データベース構築のための基本情報の収集に努めた。 本年度は、わが国でストック・オプション制度が解禁された1997年から2007年3月末までに実施されたストック・オプションについて基礎データを収集・入力することができた。また収集した基礎データについて予備的な分析を行った結果、2006年の会社法施行ならびにストック・オプション等会計基準の適用以降の付与事例から、会計処理上の問題点が明らかとなった。とくに、「権利確定条件」、「対象勤務期間」という会計上の文言を巡って、実務上、解釈に混乱が見られている点については大いに危惧を覚える。結果的に、解釈を巡る混乱が企業の公表する会計数値にもエラーをもたらしかねないだけに、早急な改善が期待される。同様に、昨今、急速に普及している株式報酬型ストック・オプション、いわゆる1円ストック・オプションの会計処理を巡っても問題点が見られ、 その結果については、「ストック・オプションの開示事例からみる会計上の諸問題」という形で法政大学比較経済研究所シンポジウムで発表を行った。なお、上記シンポジウムでの報告内容は、次年度早々に論文として公表する予定である。
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