研究最終年度の本年は、昨年度の研究を深耕し、3種類の研究を実施した。まず、昨年度の研究を受けて株式報酬型ストック・オプションにフォーカスを絞り、その実施アナウンスに伴う情報効果を検証するとともに、株式市場がそのスキームを読み取っているのか否か、さらに累積超過収益率とスキームとの因果関係を検証した。その結果、昨年度の研究で明らかとなったように、通常型は市場からネガティブに受け止められるものの、一方で株式報酬型はポジティブに受け止められていることが明らかとなった。ただし、安易に権利行使できる場合は通常型と同様、ネガティブな評価を受けており、株式市場がスキームの細部まで読み取っていることが確認された。 また、昨今多くみられ始めたストック・オプションの中止事例を対象に、中止に伴う適時開示の内容を分析するとともに、当該開示に対する株式市場の反応を検証した。その結果、記載内容は企業によって大きく異なるものの、株式市場はそうした多様性を読み取っていることが明らかとなった。とりわけ、同一の中止事由であっても、情報発信する企業の特性により株式市場の反応が異なる点が明らかになった点は興味深い。 さらに、研究初年度から継続してきたストック・オプションの開示事例に基づく現状分析と会計上の問題点についてもまとめた論文を書籍に収録した。
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