研究概要 |
本研究の目的は,保険契約に焦点を当て,公正価値測定が制度化される過程を分析することである.研究初年度の平成19年度は,研究対象と分析手法の整理を行い,次年度以降で進める研究(公正価値測定の制度化の分析)の準備作業に多くの時間を費やした. 保険契約には,金融商品と役務提供という2つの側面がある.保険契約の会計モデルとして,大きく繰延・対応アプローチと資産・負債アプローチがあり,前者は役務提供の側面,後者は金融商品の側面に着目している.国際会計基準審議会は,2007年5月に討議資料『保険契約に関する予備的見解』を公表し,保険契約を金融商品とみなして,金融商品の会計処理と首尾一貫する処理方法を提案した.そこで,保険契約の会計処理を検討する準備作業として,金融商品の公正価値会計を中心に検討した. 平成19年度の研究成果として,「公正価値会計の動向とその論点-金融商品の会計処理を中心として-」と「全部公正価値会計の適用可能性-銀行業の金融商品の会計処理を中心として-」の2本の論文を公表した.前者の論文では,金融商品の公正価値会計の動向を整理した上で,金融負債の公正価値会計の論点について検討した.また,後者の論文では,銀行業のバンキング活動に焦点を当て,公正価値会計に内在する特性を明らかにした. 次年度は,今年度の研究成果を踏まえ,保険契約の会計処理について検討を進め,精力的に研究成果を公表していきたい.
|