平成20年度の研究実績は、交付申請書記載の研究目的・実施計画に照らし、(相互関連する)3点に大別される。第一に、個人の情報の価値・情報入手行動の理論(分析的)モデルおよび先行する関連実験研究のサーベイに関しては、開示される情報の「受け手」側に焦点を当てる意味で本研究にとって必須であり、70頁強の論文として昨年度からの成果を発表した。第二に、今般の交付申請の主目的である経済実験の実施につき、6月に2回、7・11・12月に各1回、計5回の実験セッションをランした。参加者総数は計70名弱、実験の補助者は(参加者募集を含め)延べ17名であった。今年度の実験では、後になれば通知される情報を事前に知りうるかもしれない機会にっき、情報の「受け手」が金銭を消費して当該機会を利用し情報を入手するか否かの実験的な検証を主目的とし、取引制度や情報の「送り手」の存否・取りうる行動のタイプを統制・操作した。当該情報入手による金銭の費消は、経済全体のマクロの観点からは資源の無駄といえるものの、多くの参加者は機会の半分程度以上で事前情報の入手を選択するという結果が得られている。データの打ち込みと簡単な分析を終了させたため、来年度は学会での発表と学術論文化を図る。なお、これと関連して、現在までの10年余の経済学のマニュアル(=手作業)実験の経験につき、「実験の実施」面に関連してまとめた論文を発表した。第三かつ最後に、大阪大学大学院経済学研究科の高尾裕二先生と椎葉淳先生と共同で、当該研究課題「実験経済学の手法を用いた経営者開示行動の研究」の理論面の代表的文献を詳説した書籍を公刊するべく、数回の会合をもち、自身は理論モデルと対応する実験研究のパートを書き上げている。(723字)
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