本年度は、昨年度作った、生活クラブ生協北海道の役員・委員データベースを利用し、役員におけるキャリアパス分析を行うとともに、それを補完するものとして、現役員および元役員・支部委員長、また、生活クラブ生協東京役員への複数回の聞き取り調査を行った。 上記の分析から明らかになったことは、第一に、組織の状況に応じてキャリアパスの傾向は変化し、組織の成熟にしたがってキャリアパターンが固定化するということ、第二に、役員へのキャリアパスとして、組織運営に関わる支部委員長経験が非常に重要であること、第三に、1990年代以降固定化したと考えられる役員のキャリアパターンは、役員としての任期の長期化にとどまらず、役員就任前の委員および委員長経験の長期化と平行していることなどである。これは、役員・委員のなり手不足という負の側面として捉えられがちであるが、反面、個のスキルアップという点においてはプラスの要素として捉えうるものでもある。 また、地域社会学会大会における自由報告では、これまで十分に議論されてきたとは言いがたい、班について、生活クラブを事例としながら再評価を試みた。あくまでも暫定的な結論にとどまるが、教育機能やアイデンティティの強化など、従来班によってなされてきたといわれてきた側面が、実態としては役職経験による効果の方がはるかに大きく、この点から考えると、従来の研究が強調してきた班の役割は相対化される必要があり、班の縮小が生協運動に与える負の効果はそれほど強調されるべきものではないのではないかということを主張した。
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