本年度は、昨年度に引き続き、生活クラブ・東京の戸配組合員の役員・委員(経験者も含む)に対する追加の聞き取り調査を行い、これまでに積み上げてきた仮説、すなわち、班や戸配といった、従来ある種の「定説」とされていた加入形態の効果以上に、組合員個人が組織の中で積み上げていくキャリアの効果の方が高い重要性を持っていることを再確認することができた。また、委員には、講習会等の「仕掛けに乗った」、相対的に積極的な組合員が就任する傾向があり、また、その期間も、以前に比べて長期化している(簡単にはやめられない)状況も再確認できた。他方、地域差の問題についても、一般的なものに比べて高価な消費材価格などの影響から、生活クラブの思想・理念が受け入れられやすいところとそうでないところの差は大きく、日常的な活動や拡大のみならず、リーダーの再生産に対してもある程度の影響を与えていることをうかがい知ることができた。 また、本年度も福祉クラブ生協のトップ共育にオブザーバーとして参加することができ、神奈川でワーカーズコレクティヴに参加するリーダー層に関する今後の調査・研究への足がかりをさらに強めることができた。そして、これまでの調査結果を踏まえて、共同研究者と獲得した助成を利用し、本年度10月に生活クラブ生協・東京に対する組合員アンケート調査を実施した。本年度当初から調査票の作成に取り掛かり、年度末にようやくデータセットが完成した。これらは、本研究の過程で獲得した新たな「材料」であり、分析等は今後の課題である。
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