本年度は研究代表者が5月から2月まで国内留学のため首都大学東京に在籍していたことから横浜・寿町でのフィールドワーク調査を集中的に実施することができた。かつては日雇い労働者の街として知られ、現在は生活保護受給者が大半をしめる横浜・寿町を事例として、大都市インナーエリアの変容、再編の状況とその社会的背景に関するデータ収集に努めた。その際、参与観察法、インタビュー法など主に質的調査法に基づいて調査を実施した。2008年1月以降は、2007年収集した調査データを整理してまとめながら、補足的な調査、データ収集を実施した。 本年度の調査、データ収集を実施した。 (1) 寿町の高齢化の進展と生活保護層の定住化 (2) 寿町の「まちづくり」の展開と環境改善の取り組み (3) 横浜市のホームレス自立支援策と援護対策の変化 (4) 寿町における地域再編過程 近年の寿町においては、その住民は定着型の生活保護層、流動層(自立支援施設利用者、宿泊券を利用しての簡易宿泊所宿泊者、現役の日雇い労働者、外国人労働者)、ホームレス層(自立支援施設からの脱落者、自立支援策の拒否者)の3タイプに分けることができる。人数的に圧倒的多数を占めているのが生活保護層であり、高齢者・障害者が多く含まれる。住民の属性が変容してきたことによって寿町内地域関係者の間の力関係が変化し、行政との協力のもと、福祉関係者が中心となった地域活動の展開が見ちれる。 また、本年度に実施した請査の成果の一部は山本薫子『横浜・寿町と外国人-グローバル化する大都市インナーエリア』(福村出版、2008年)として発表した。
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