本年度も前年度に引き続き、横浜・寿町においてフィールドワーク法に基づく質的調査研究を実施した。(1) 5月~7月:地域住民のライフヒストリー聞き取り調査(元日雇い労働者、簡易宿泊所管理人など)、(2) 4月~3月:地域内でアート活動を実施する市民活動団体へのヒアリング、イベント・ワークショップ等への参与観察調査、(3) 8月~3月:地区内公園・公共施設再整備計画のワークショップでの参与観察調査、(4) 年間を通じて、ホームレス等、社会的困難層への支援活動を実施する市民活動への参与観察調査(炊き出しなど)。これらを通じて、(1) 新規参入団体の活動状況の把握、(2) 行政、地域団体を主体として実施されているまちづくり施策の状況把握、(3) 旧来型の地域団体の活動状況把握を行った。これらから以下の事実を確認した。(1) 近年各地でみられるアート活動、イベントのまちづくりへの適用が寿町でも活発化していること、(2) その活動が現在のまちづくりの事業運営の核なしていること、(3) いっぽうで、近年の経済不況の影響を受けて、社会的困難層の寿町への新規流入が増えており、その一部は生活保護受給者層となっている。 今年度は前年度までの研究成果を雑誌論文、学会発表として報告すると同時に、横浜市内などの複数の大学が連携して運営する「横浜文化創造都市スクール(北仲スクール)」において寿町でのフィールドワークを企画、運営した。また、かながわ国際交流財団主催のスタディーツアーに講師として参加し、寿町の歴史と現在の状況、外国人住民の状況について解説を行った。このように、学術研究に関連して、対象地域に関する社会への知識提供を実践的な場面においても実施した。
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