本研究の目的は第1に、階層などの客観的諸条件とは相対的に独立した「ミリュー」という潜在的文化集団が、ライフスタイルを中心とする主観的諸条件によって形成されるとの前提にもとづき、現代日本における若年層の分化を適切にとらえうるミリュー・モデルを構築することである。第2に、そのモデルを政治行動分析に適用し、若年層の政治的亀裂について明解な説明図式を提示することである。 本年度は、東京都において「都民の社会意識と政治に関する調査」という質問紙調査を実施した。東京都知事選直後の2007年5〜6月に都内8区市の有権者4800人を対象として実施し、有効回収数は1663票だった。若年層(20〜39歳)サンプルはそのうち588票である。 このデータを用いた予備的分析として、本年度は都知事選の投票行動について分析を行い、石原都知事の支持基盤にみる日本型ポピュリズムの特質について検討した。分析結果は論文として公表している。また、既存のデータを使用してミリュー析出の予備的分析を行い、日本社会学会で報告を行うとともに、ミリュー研究に詳しいドイツの政治研究者を招いて行ったワークショップでも日本でのミリュー研究の暫定的な成果を発表した。 また、脱政党時代の政治状況を把握し、量的データを補完すべく、政党関係者、市民運動関係者に幅広くインタビュー調査を行った。その調査内容の一部を、地方政治における投票行動に関する論文で使用している。
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